龍馬さんへの手紙
Tue 06 , 10:44:55
2010/04
拝啓 龍馬様
一筆啓上仕候と書きかけて、さて龍馬さんはこの一筆啓上仕候で始まる手紙を何通書いたのか気になり、宮地佐一郎先生編の「龍馬の手紙」を開きました。結果11通を確認。これは、現在知られている手紙総数139通の1割弱にあたります。
そのうちの5通が、父八平と兄権平宛の手紙の書き出しとなっています。
二男と云う厄介の身としては乙女姉さんへの手紙のように自由閣達には書けなかつたんですね。そのうえ、この書き出しで始まる文は、どこかシャッチョコばって堅苦しい。
重要な節目に差し出した手紙だからでしょう。
一方、この神戸の地からの手紙は有名な「エヘン・・・」にしろ「洗濯・・・」にしろ故郷の皆に精一杯自分の活躍を誇る言葉が躍つています。実は私の親父も故郷土佐に向けては逆とんぶりするほど見栄を張つたものでした。帰郷の際のお土産の多かったこと、私達の身なりも坊ちゃん風に整えてのことでした。
そう故郷に錦を飾りたいがは、何時の時代も変わりゃせん。
さて、この平成維新とも言うべき政権交代が実現したものの、半年を待たずして、はやくも鳩山政権の迷走止るところを知らず。政権メルトダウンの様相を呈してきました。
そう故郷に錦を飾りたいがは、何時の時代も変わりゃせん。
さて、この平成維新とも言うべき政権交代が実現したものの、半年を待たずして、はやくも鳩山政権の迷走止るところを知らず。政権メルトダウンの様相を呈してきました。
そして、巷には龍馬さん、あなたの再来を希う声が満ち溢れています。
それは、薩長同盟、亀山社中、船中八策等の事跡がもたらす英雄としての貴方の再来を望み、この時代、龍馬さんがおればなんとしただろう、何をしてくれるだろう、どんな方向を差し示してくれるだろとの切なる願いからに違いありません。もちろん自身龍馬の如く生きることを願う若者も数多。
そんな時、私は貴方が旧友溝渕広之丞に宛てた一通の手紙が気になってしかたがありませんでした。
それは世に「龍馬の存念書」と云われる文書で、後藤象二郎との清風亭会談直前に、心中を溝測広之丞に披歴した、龍馬さん貴方の本心を語つた唯一の手紙ではありませんでしたか。
何故、龍馬さんが仇敵ともいえる後藤象二郎と手を結び海援隊結成に動いたのか、その際の、それまでの、龍馬さんの胸中を推し量れる一通と思っています。
原文では読みにくい年代の方もおられることから、津本陽先生の現代語訳を引用します。
『先日お耳にいれた私の志を、ほぼこの書状にしたためましたので、ご覧下さい。
私は二男で、成長するまで兄のもとにいました。江戸に遊学したころ、君恩に酬いるために、海軍に志があったので、藩庁に乞い、一生縣命に操艦術を身につけようとしてきました。
しかし才能に乏しく知識は浅いうえに、常に困窮し、資材に不自由したために、単身孤剣を抱き、奔走するもすみやかに成功しませんでした。
しかし、ほぼ海軍のかたちをととのえたのは、貴兄の知るところです。
数年来東西に奔走するあいだに、しばしば土佐藩の上士たちに会い、知らぬ顔をして通り過ぎました。
人として父母の国を思わないものがあるでしょうか。望郷の情を耐え忍んで故郷の人にも 気付かぬふりをしたのは、情のために道を踏み誤り、宿志を遂げられなくなることを、おそれたためです。
志を達することが出来なければ、どうして君公の御顔を拝することができましょうか。
これは私が浪人として天下を往来し、仕官することなく、半生の労苦を辞さないところです。
貴兄は私をかわいがつてくれるので、ここに日頃の志を述べるところです。お察し下さい。』
この龍馬さんの言葉どうり、脱藩者は僅かな同志と連絡をとりあい、いつ命を落とすかも知れない浮浪の生活を送り、大半は戦場で死ぬか、路傍で倒れました。本当に多くの友人知己を喪なったその悲しみに耐え、なおそれを乗り越え、『それハそれハおそろしい義理というものあれバこそ、ひとりのをやをうちにをき、玉のようなる妻ふりすて、ひきのようなるあかごのできたに、夫さへ見ずとおけいとハ、いさましかりける次第なり。』(慶応2年1月20日池内蔵太家族あて。原文ママ)と池の家族に諭す手紙を書いている龍馬さんの覚悟。
皆さんはその存念を知っていましたか。
そして、今どれ程の人々がこれ程の覚悟を背負うことが出来ることでしょうか。
皆さんはその存念を知っていましたか。
そして、今どれ程の人々がこれ程の覚悟を背負うことが出来ることでしょうか。
本当に、その覚悟が有るのか無いのかと龍馬さんから厳しく問われている手紙に思えます。
この度の龍馬甲子園2010の「龍馬さんへの手紙」一筆啓上仕候と書きだしながら、以上のことを考え始め、精一杯筆を進めましたが、ここに感極まり、書き続け難く、これにて失礼いたします。
ペンネーム 神戸龍馬子 2010.3,15記
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