龍馬 様　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　平成22年2月20日
梅花馥郁の候 坂本家皆々様にはその後如何お過ごしでしょうか。 以前京都『寺田屋』で受けた両手の指の古傷は冬場に痛みはありませんか。念の為、お伺い申し上げます。本日は故あってご無礼を顧みず、突然お手紙を差し上げることになりました。 当地『にっぼん』は昨今地球温暖化とか言われ、特に気候の変動が著しく例えて言いますと『梅は咲いたに桜はまだか』の状態で毎年桜の開花が狂って美しかった日本の四季にも少なからず影響が出ています。 また、このところの我国は政治・経済をはじめ雇用・教育・社会保障・外交等々あらゆる面でひずみが生じており、出来得ることならあなた様に是非とも『いま一度せんたく』をお願い致したいところですが、折角悠々自適の御身でありますので、本日はこれ以上は申し上げる積もりはございません。それよりも、今回はあなた様にまつわるにっぽんの最近の世情をいくつかお知らせすることにしました。
●テレビ業界では、今日でも時代劇は大変人気があり幡利38年からは『NHK大河ドラマ』というものが放映されております。昭和43年その6作目に司馬遠太郎先生の『竜馬がゆく』というタイトルであなた役を俳優の北大路欣也が演じて、あなた様に負けず劣らすイイ男振りを遺憾なく発揮しました。また、それから42年後の今年は49作目として幕末を駆け抜けた英雄の生涯『龍馬伝』_として福山雅治が主役を演じて更に好評を博じつつあります。この人物も大変スマートな印象ですが、俳優ではないのでチクト気にいらんかも知れません。そんな時はどうか、かって横井小楠先生に言われたように二階ならぬ天上にござってチョイと指図してアドバイスのひとつふたつしてやって欲しいと思います。
●次に、『龍馬伝』の放映を受けて地元土佐では、『土任・龍馬であい博』(H22・1.16～H23.1,10)が開催され、高知県内には4ケ所の社中(パビリオン)もオープンして全国からファンが詰めかけることになるとおもいます。あなた様は勿論のこと生まれ故郷の土佐の株がこじゃんと上がること疑いなしです。 絶好の機会であり、期間中に一度はお顔を出してもらいたいけんど、何かとご多瑞の折無理ですろうか?。 また、土任・高知は全国有数の酒どころで酒飲みが多いと言われて久しいですが、高知県内の酒販店が平成17年に理想の飲ん兵衛像をまとめた【飲兵衛八策】を起車、発表しています。 阪本家や元土佐勤王党の連中との酒席での立ち居振る舞いの参考にしていただければ宰いです。 酒と言えば、土佐の酒の銘柄に『龍馬』や『竜痛』・『船中八策』・『海援隊』というものが出回る他、最近では【焼酎】も人気沸騰となっております。また、あなた様ご本人が知らぬ間にコマーシヤルに出演せられ、『○○ぜよ』と土佐弁を連発されておりますが、知っちゅうがでしょうか?。
●一方、日本初のカンパ二―亀山社中を立上げた思い出の地長崎でも、『籠馬伝』の盛り上げも含め歴史情報の発信に取り組んでいます。平成21年8月1日から『長崎市亀山社中記念館』の公開が始まりました。 --1/2-- 『亀出社中』の遺構を幕末当時のままに復元し、あなた様がもたれかかって座ったとされる座敷の柱や落ち着いた黒褐色の建具もそのまま…。今日も数多くの影武者?が柱にもたれてピストルを構えています。また、あなた様がよく通われた『花月』近くの丸山公園には長崎市で3体目となる寵馬銅像(2,4m)があなた様の誕生日であり、ご命日でもある平成21年11月15日に除帯式が開かれたようです。日本全国に一体いくつの調像があるのか、ご存じでしょうか。かく言う私も実は多すぎて明確に把握していません。長崎にも化粧箱にあなた綾の写真が入った『本格焼酎:長崎の志士』というのがあります。長崎では、ぶらぶら歩くことを方言で『さるく』というそうですが、その音あなた様が歩かれた場所をなぞるかの様に、今も多くの観光害が『さる<』を含言葉にゆかりの地を回り、出会いを期待しています。平成23年1月10日までの短期間ですが、『長崎奉行所・龍馬伝館』もオープンしたとのことです。
●同じ九州でも鹿児島では、『龍馬ハネムーンロードをめぐろう1』をスローガンとした歴史を楽しみながらのウオーキングに全国各地からの龍馬フアンが集つているとか。寺田屋事件で九死に一生を得たあなた様が西郷隆盛さんらのすすめでお龍さんと共に傷を癒しながら霧島で遊ばれたことが、今日では日本初の新婚旅行といわれていますが、ご本人の感想はいかがですか? おそらく生涯で最も楽しい日々であったでしょうね。今でもはっきりと記憶されておられる筈ですが、かと言って『思い出し笑い』はいかんぜよ。塩浸温泉近くには『坂本龍馬。お龍像』が今も健在ですよ。
●この他にもゆかりの地としては、下関・輌・神戸・京都・福井・江戸と数多<あり話題には事欠きません。名残りは思きませんが、今日はこれまでとし最後に前述の『飲兵簡八策』を記して筆を置くことにします。末筆ながら、気候不槙の折呉々もご自愛専―の程切にお祈り申し上げます。　　　　　　　            敬具 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　記 　　　　　　　　　　　　　
『飲兵衛八策』(酒本寵馬)
1.天下の市民権を飲兵衛に奉還せじむる為、若者憧憬の飲酒作法を示すべき事。
1.上戸下戸・老若男女の別なく、飲酒の無理強いなく、万人楽し<酒宴は催すべき事。
1.天下の人材と積極的に酒を酌み交わし、無名の人物なりとも同様に成すべき事。
1.外国の人材と交流広く成し、日本の酒と食の文化を伝うるべき事。
1.古来の酒道・自らの美学に則り、宣しく酒量・節度を守り飲酒すべき事。
1.酒席にて議論おおいに成すも、誹議中傷・暴カー切厳禁とすべき事。
1.酒席にて鶴若無人にからむ輩、一切相手にせず柳に風と蔓け流すべき事。
1.飲み代常時その場の決済にて、借り飲み・賀じ借り成さぬべき事。
椙山拓治拝
【龍馬返書】
椙山様　やっとお手紙頂けましたね。首を長くして待っておりました。
先には、日本初の龍馬検定・神戸編の郵送検定で合格され、合格書をお贈りしたことでした。
あなたのお手紙で、私がお世話になった各地で、思いがけない盛り上がりを頂いているようで、感謝感激です。
勿論、私をさまざまに取り上げて頂くと同時に、この日本、いや今や世界・地球が進むべき平和像を模索されることは、私の志と同じベクトルにて、やっと私の頑張りが報われる時が来たと喜んでおります。
なお、末尾の飲兵衛八策には腹を抱えて笑いましたが、拙者思われている程の酒飲みにはあらず。
ただただ、酒を交えて何とか相手を味方に引き入れようとしていたわけです。
椙山様もどうやらいける口の様ですが、くれぐれも飲み過ぎにご注意の上、ご自愛のほどお願いしますよ。